『第三の磁場 未然形の作家、埴谷雄高』をめぐる補足事項など 書家・石川九楊とのかかわりから
新刊『第三の磁場 未然形の作家、埴谷雄高』の執筆背景について少し補足説明いたします。
そもそものはじまりは、書家・石川九楊さんの大規模な回顧展に行ったことがきっかけでした。展示された内容のうち、
・初期作品群でとりあげられている聖書やドストエフスキーといったモチーフ、石川九楊さんの極限志向が明らかに第一次戦後派由来であること
・俳人、河東碧梧桐の句を使った連作が、たしかに「書」でしか示しえない境地になっていて、ことばを使用しながらことばを越えた世界をとらえていたこと
がきっかけとなり、石川九楊さんの作品に強い興味をいだきました。石川九楊さんが執筆した河東碧梧桐論は、書家・河東碧梧桐の独自性から絶え間ない変革者としての河東碧梧桐をとらえようとしており、石川九楊さん自身にもひきつけた内容となっていました。また、同書に頻出する「革命」という言葉から、私は、第一次戦後派の埴谷雄高の営みを連想しました。
ここに、河東碧梧桐⇒埴谷雄高⇒石川九楊という流れが私のなかで構築され、石川九楊さんと埴谷雄高の対比を行うための心づもりができました。
そして、石川九楊さんのエッセイ『悪筆論』で指摘された、あらゆる肉筆の文学作品の本質は未然形であるという結論は、埴谷雄高が追及した「存在」の主題をめぐる創作群と私のなかでむすびつき、石川九楊さんのいう「未然形」という視点から小説家、埴谷雄高の解析を試みるきっかけになりました。
本書は、埴谷雄高と石川九楊さんをめぐる、私の妄想実験をまとめたものです。ジャンルもなにも全て横断し、飛躍に飛躍を重ねていますが、埴谷雄高作品と石川九楊さんの『悪筆論』の魅力をかきとめることはできたと自負しております。
よろしければ、現物をお読みいただればと思います。
神保町パサージュにて、発売中です。
2025年07月06日
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